安永ノリカズのゲーム制作&Javaサンプル集

#12 ゲームの設計と6年前のテキストファイル

「仮想ユーザープレイ日記」というアプローチでゲームの設計を試みます。

2002年10月15日更新

プログラムの設計で大事なこと

今回は、会話テストプログラムをWebアプリケーションとして作成するうえで、 その最初の一歩となる設計方法について、考えをめぐらせてみようかと思います。 実際に動くものは、もうしばらく待ってくださいね。

アプリケーションを設計するにあたって、まず何をしなければいけないのでしょうか? もしくは、どういうスタンスで設計に望めばいいのでしょうか?

最近はやりのソフトウェア開発手法に、XP(Extreme Programming)というのがあります。 XPでは、まずはじめに「計画ゲーム」というミーティングを行います。 そこでは、顧客が"ストーリーカード"に実現したい事柄を書き、 そのカードに対し開発者が見積りを行い、スケジュールを決めていきます。
また、プログラムの設計図を書くために用いられる表記方法に、UMLと呼ばれるものがあります。 ここでも、まず最初に書くのはユースケース図という、 システムが提供するサービスと、その利用者の関係を図に示したものです。

これらに共通しているのは、「作る側」の視点だけでなく、 「使う側」の視点からも、要求される機能の検証を行っているということです。 無意識に開発者の理論で作業を進めがちなところに、 他者の視点を置くことによって、設計に客観性を持たせているのだと、僕なりに解釈しています。 大切なのは、ユーザーの視点だということですね。ゲームの場合も同じだと思います。

そこで、ふと思い出しました。ワーネバの企画の初期段階の頃です。 ワーネバを購入したユーザーを想像して、彼が書いたプレイ日記という形で、 ユーザーの視点を分析しようとしてたことを。あの文章どこに行ったんだろう?
正式に書類として作成したわけじゃなくて、 僕のアイデアを具体化するために書いた、いわば落書きみたいなものでしたから、 さすがに残ってないだろうなぁ……と、なかばあきらめて昔のPCのバックアップを探ってみると、 見つかりました! 書きかけのバージョンが。
それがこれ、マコト君の「ワーネバ」日記です。 ファイルのタイムスタンプを見ると、1996年3月8日。 今からさかのぼること6年半。ワーネバ発売の1年半前ですね。 企画当初は、あんなこと考えてたんだな、と思わず懐かしくなりました。

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ゲーム設計手法としての「仮想ユーザープレイ日記」

僕が書いたこの文章は、他人にゲームのイメージを伝えるというよりもむしろ、 今から作ろうとするゲームのシステムに、 どんな機能が必要なのかを洗い出す手段としての意味合いが強かったように記憶しています。 実際のところは、日記に書いた機能の大半が、企画の途中段階で変更、削除されており、 最終的な製品には反映されてません。 でも、これからゲームを制作する、そのスタートにあたって、 考えをまとめるのに良いきっかけになったと思っています。

この仮想ユーザープレイ日記の利点は、いくつかあります。

などなど、企画初期の段階では、とても有効な手段だと思います。

もし、ゲームを作ろうとしている方で、漠然としたアイデアはあるけど、 いざ作り始めるとすぐに行き詰まるって人は、一度試してみてください。 自分のゲームで遊ぶユーザーのイメージを明確にすることは、 ゲーム制作において、とても重要なファクターだと思います。 そして、それを想定できない限り、制作を進めることは出来ないと考えてください。

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今回はフミヤ君

では、今回も、仮想ユーザープレイ日記を書いてみて、 「魔法使いの街」をユーザーの視点から分析してみようと思います。 題して、「フミヤ君の『魔法使いの街』プレイ日記」です。

11月○日

ある掲示板で話題になっている、Groovy Number!というサイトに行ってみた。 魔法使いの少年の生活を描いたゲームで、ダンジョンも戦闘存在せず、 ただひたすら生活するゲームらしい。 ちょっと風変わりな感じが、興味をそそる。

トップページにある「魔法使いの街 Ver0.1」というロゴをクリックする。 ゲームの簡単な説明のページに飛んだ。 なになに……まずは会員登録をしないといけないのか。 入力するのは「登録者の名前」と「メールアドレス」。 あまり個人情報を入力しなくていいので、気軽に登録できるな。

ポチ。登録ボタンを押す。 「登録されたメールアドレス宛てに、パスワードを送信します」だって。 なるほど、こうやってメールアドレスが本人のものかどうか確認するんだな。 正しく受信できる人のみが、ログインできる仕組みってわけか。

さっそくメールソフトで受信してみると、来てる来てる。

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「魔法使いの街」にご登録ありがとうございました。

以下の内容で、プレイヤーが登録されましたので、お知らせします。
登録者の名前 :中村文哉
メールアドレス:fumiya@xxxx.ne.jp
パスワード  :v5s9d34f

それでは、「魔法使いの街」をお楽しみください。
ログインはこちら↓
http://www.groovy-number.com/login.html

ご意見、ご要望、お待ちしています。
nori@groovy-number.com  <安永ノリカズ>

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ようし、早速ゲーム開始だ!

ログイン画面に、メールアドレスとパスワードを入力したらゲーム内容の紹介ページに飛んだ。 どうやら、プレイヤーは、この街に一人前の魔法使いになるためにやってきた、 見習い魔法使いという役回りらしい。

「次へ」のボタンを押すと、キャラクター設定画面になった。 キャラクターの名前と、生年月日を入力するればいいんだな。 おや、服装を選ぶ項目があるぞ。キャラ設定にどう関係するんだ? でもまだゲームの中身がわからないんで、 適当でいいや。
全部入力し終わったんで、「設定」ボタンを押す。いよいよゲームスタートだ。

いきなり会話が始まったみたい。この街の市長さんが出てきたぞ

市長「よくきたなフミヤ」

画面の上部に、プルダウンメニューがあって、 そこに会話の候補がリストアップされている。 ま、最初は、無難な会話で行こう。 「はじめまして」を選択して、「発言」ボタンと。

フミヤ「はじめまして」

おお、新しいメッセージが一番上に挿入されてたぞ。 掲示板みたいなスタイルだね。いやむしろ、顔グラ付きチャットと言った方が近いかな。

市長「よく来たな、フミヤ。君がこの街にいる間、私が君の父親代わりだ」
フミヤ「まだ、魔法のこと全然わからないんです……」
市長「心配することはいらん。この街は、親切な人ばかりだから」
フミヤ「どうやって、魔法を覚えればいいんですか?」
市長「やはり、実践が一番。どこかのお店でアルバイトをしながら勉強してはどうだ?」
市長夫人「こんにちは、あなたがフミヤくんね」

あ、話し相手が増えた! なるほど、こうやって複数の会話相手を実現しているんだね。
市長さん夫婦との会話を終えると、街の地図が出てきた。場所を移動しろってわけだな。 んー、アルバイト先ねえ。よし、この「La Gonbee」ってレストランに行ってみよう!

地図をクリックすると、さっきの会話モードになった。 どうやら、右上に表示されている名前が、この場所にいる人のリストみたいだ。 とりあえず、ヒゲのおじさんに話し掛けてみる……

ざっと、こんな感じですね。 なんとなくイメージをつかめてもらえたかと思います。 ここから、必要な機能をリストアップするわけですが、 結構長くなりそうなんで、今回はここまでにしておきましょう。
続きは、次回のコラムにて。

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