安永ノリカズのゲーム制作&Javaサンプル集

#08 どんな社会を作ろうか?

社会構造シミュレーターの方向性を検討しています。

2001年04月10日更新

ちょっと反省

新しい年度が始まりましたね。心機一転というほどでもありませんが、 少し、この連載の軌道修正をはかろうと思います。 最近のコラムは、技術的なところに話が偏りすぎてました。 そもそもは、ゲームが作られる過程を遊んでくれる人にわかりやすく伝えたい、 というのが発端だったんで、もっと誰もが興味を持てて、理解できる内容を増やしたいと思ってます。 んで、出来ることなら、なるべく短くまとめて、更新頻度を上げる予定(は未定?)です。

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みんなで作る社会

次に作るテストプログラム「プロトタイプ3号」は、社会基盤シミュレーションです。 社会基盤というと、なにやら大げさな感じですが、RPGでいうところの 「戦闘でお金と経験値を入手」「ショップで武器を購入」「宿屋で回復」 というような基本的なゲームのルールと考えてもらえばいいです。
さて、どのようなルールを用意してあげれば、このゲームは面白くなるんでしょうか。 そこんところを考えやすくするために、改めてもう一度、 どういうイメージのゲームを作ろうとしているのかを、まとめてみたいと思います。

以前のコラムでも述べましたが、このゲームのコンセプトは、 「架空世界で生活する人々とコミュニケーションを楽しむ」です。 ということは、多くのゲームにあるような、主人公のキャラ(PC)だけが、 その世界への影響力をもっているシステムじゃなくて、 主人公以外のキャラ(NPC)も含め、全員でひとつの社会を構築しているような形態が理想です。 コミュニケーションをエキサイティングなものにするには、お互いの立場が対等であることが不可欠でしょう。
そういった社会の中で、協力してひとつのことを成し遂げたり、 困っている人を助けたり、ときには仲間を裏切ったり…… NPCとのよい意味での駆け引きがうまれるゲームにしたいと思ってます。

会話テストプログラムの「魔法の森・プロトタイプ2号」で、チラッとでてきましたが、 主人公は見習い魔法使いという設定で、 目的は、魔法の森での生活を通して、一人前の魔法使いになることです。 登場人物は、全部で20人程度に絞り込む予定で、それぞれ個性的な設定をあたえます。 ワーネバシリーズをご存知の方には、「オルルドやプルトよりアイランドに近い形」 といえば理解してもらえるでしょう。

住人たちもそれぞれの目標を持っていて、その目標に向かって生きています。 たとえば、ぶどう畑で働くバギーさんは、「世界一おいしいぶどう酒を作る」ことを夢みてて、 酒場で働くクイーンさんは「家出した亭主が戻ってくるまで、酒場を切り盛りする」 ことに一生懸命だったりします。
住人たちの行動は、互いに関連しあっていて、 一人の行いがほかの住人全員に迷惑をかけることもありえます。 ぶどう畑の例でいえば、バギーさんがぶどう酒作りを失敗すると、酒場のお酒がまずくなって、 大人たちの機嫌が悪くなったりとか……。 そういう社会の中で、主人公は大人たちに魔法を教わり、成長していきます。

魔法は、何でも出来る超能力というよりは、その人の固有の特技として描こうと思ってます。 ケガを治す魔法、風を呼ぶ呪文、ぶどうを色づかせるおまじない、 不思議な効能のある料理を作る知恵。 一人前の魔法使いと認められるためには、主人公にも、そういう個性的な魔法を身に付けることが求められます。 もちろん、他の住人が新しい魔法を習得することもあります。

イベントは、住民同士のコミュニケーションによって発生します。 図書館で先生に挨拶したら、宿題を出されたり、友達とケンカして、村長さんにしかられたり。 プレイヤーの入力待ち以外の時間はリアルタイムで進みますので、プレイヤーが何も操作しなくても、 誰かに話しかけられるまでは、自動的にゲームは進行します。 当然、主人公のいない場所でも、他の住民同士が会話してイベントが進行していたりします。

ざっとではありますが、これが、僕の作ろうとしているゲームのイメージです。 人々が力をあわせて作り上げた社会を表現できたらな、と思ってます。

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風が吹けば桶屋がもうかる

では、上記のイメージからどのようなゲーム要素、つまりは社会基盤が抽出できるでしょうか。

まず必要になるのが仕事。それも、それぞれ違った職業が必要ですね。 魔法はその人の特技なので、使える魔法によって職業が決まるシステムにしましょう。 空を飛べるなら郵便配達、未来のことがわかるなら占い師、みたいな感じです。 さらに、それぞれの仕事の依存関係も構築しないといけません。 手紙を配達するには空飛ぶほうきが必要で、空飛ぶほうきを作るには魔法の木が必要で、 その魔法の木を探すのに必要なのは……というふうに、 すべての仕事が相互に関連しあっている状態にしたいと考えてます。

魔法の習得という要素も必要です。 これは、主人公が魔法を覚えるという設定があるからだけではなく、 住民にとっても重要なことです。誰かが新たな魔法を覚えれば、仕事の質が変化して、 社会全体に影響を及ぼすことになります。実生活でいうところの、技術革新ですね。 郵便やさんが、今までよりもっと速く飛べる魔法を身に付けたおかげで、 両親からの手紙が、たくさん届くようになるかもしれません。 社会構造が変化することで、時代や、世の中の移り変わりを表現する演出にもなりそうです。

ということで、プロトタイプ3号は、仕事を中心に、住民の依存関係をシミュレートした、 人々のからみ具合テストプログラムにしたいと思います。 固有の能力と役割を与えられた人たちが、どのように相互に関係しあってひとつの社会を作るか。 一人の人物の行動で、社会がどう変化するのか。 その社会モデルの面白さが、登場人物に生命感を与え、 ひいては、その社会で主人公が魔法を学ぶことの面白さにつながるのではと思ってます。

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無難なところでいきましょう

コラムの内容を軌道修正するついでに、ジャンルの呼び方も修正します。 第2回のコラムで、 「このゲームのジャンルをコミュニケーションゲームとする」と明言しましたが、 検索エンジンでサーチしてみるとこの「コミュニケーションゲーム」って結構引っかかるんですよね。 で、どういうものに対して使われているかというと、 「仮想世界でチャットなどが出来るネットゲーム」の場合と、 『どこでもいっしょ』のように「ペットなどと対話をして、リアクションを楽しむゲーム」 の場合があるみたいです。 別の種類のゲームに対して用いられる言葉を使うのは適切じゃないと判断しまして、 呼び方を変えることにします。
どうせなら、ゲームの雰囲気をわかりやすく伝える言葉がいいだろうなと思いまして、 無難に「生活シミュレーション」としたいと思います。 こちらの呼び方も検索でたくさん引っかかりますが、 「牧場物語」や「ワーネバ」のことをそう呼んでる場合が多かったので、 ま、いいところじゃないでしょうか。
ゆくゆくは「育成シミュレーション」とか「恋愛シミュレーション」と並んで、 「生活シミュレーション」がひとつのジャンルとして認知されるようになればいいなと思ってます。

次回のコラムでは、プログラムを発表できるかな? もっと具体的に仕様を決めるため、 もう一度コラムをはさむかもしれません。
とりあえず、ご期待ください。

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