安永ノリカズのゲーム制作&Javaサンプル集

#09 登場人物は何人?

NPCの総数を再検討。それにともない、新しいタイプのNPCを設定しました。

2001年05月08日更新

毎度、行き詰まってます

今回は、職業を設定するにあたって、浮き彫りになったNPCの問題について、 考えてみようと思います。 まずは、いつもの失敗談から……。

NPC、つまりは登場人物の数を決めるときに、選択肢は二つありました。 ひとつは、汎用的な数百人のキャラクターを登場させること。 もうひとつは、人数を絞り込んでキャラクターの個性を際立たせることです。
僕は、迷わず、登場人物を絞り込む道を選びました。 人物ごとに性格や職業を設定して、それに応じたセリフや行動パターンを実装することで、 生き生きとした人物を描くことが出来ると考えたからですし、 以前から、それをやってみたいと、強く願ってたからです。

もちろん、数百人のキャラクターに対して、設定を与えるのが理想ですが、現実的ではありません。 「やれることからやる」というのが今回の制作のモットーなんで、 とりあえず、20人程度の人物の設定を行いました。これが会話テストの「プロトタイプ2号」のときです。
そして、3号の開発にいたって、彼らたちだけで完結した世界を構築しようとしました。 目指すのは、物が流通することで人々の生活が潤い、住民が助け合い共存する「魔法使いの街」です。 しかし、そこでの職業を設定していくにつれ、色々と問題が生じてきました。

まず、その人口の少なさから、小さな規模の社会しか描けないという問題に直面しました。 少人数だけで、自給自足の生活を行うとなると、どうしても、 こじんまりとした農村型社会になってしまいます。 色々楽しそうな職業を考えても、都市的な性格のもの、いわゆる第3次産業を世界観に組み込むのが困難で、 たとえば、レストランの仕事などは、妙に浮いてしまいます。 様々なお店を登場させて、活気ある社会を作ろうと思っていたにもかかわらずです。
どうにか、登場人物ごとにお店を持たせたとしても、みんながそれぞれの仕事についたら、 客がいなくなるという問題があります。 だからといって、客としての住民の行動を優先させたら、店が休みがちになることでしょう。 思い切って店の数を絞り込んでも、ただ単に社会のスケールが小さくなるだけで、 とても、複雑に依存しあった社会を構築できるとは思えません。

結局、いろいろと模索はしてみたんですが、 「少人数完結社会」と「資本流通社会」を共存させることは出来ませんでした。
この不安は最初から抱いてはいたのですが、「魔法」という世界観を使えば、 何とでもごまかせるだろうと楽観的に考えてました。 しかし、世の中は甘くないですね。 ごまかし方を模索しても、制作スケジュールを遅らせるだけの結果にしかなりませんでした。

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2種類のNPC

小泉政権の構造改革じゃないですが、行き詰まったら、根底から変革するしかありません。 世界観でうまくいかなかったら、システム面でアプローチするべしです。

やはり、レストランなどのお店を登場させるには、ある程度の人口が必要ですよね。 かといって、単純に人口を増やして、キャラクターの個性を削っては、面白さが半減してしまいそうです。
そこで、登場人物をメインサブの二つのパターンに分けることにしました。

まず、メインの登場人物。 これは、今まで登場させようとしてきた、個性を設定されたNPCで、 プレイヤーが操作する主人公も、彼らと同じデータ構造をもちます。 彼らのほとんどは、生産者として何かを作る、もしくは、販売者として何かを売る仕事をもってます。 そして、家に住み、この街で生活を営む、いわゆる主要人物です。 会話データや思考ルーチンも彼ら専用のものが用意されます。

それとは別に、サブの登場人物を用意します。 まだ人数は確定してませんが、メインの登場人物よりは圧倒的に多く存在します。 彼らは、主に消費者(客)として行動します。 データも会話も、汎用的なもので対処するので、個性が生き生きと描かれることはないかもしれません。 しかし、彼らは大衆として行動することで、世の中の動向を表現します。 時代の流れを作り、メインNPCの産業の仲介役を果たすのです。 いわば、エキストラとしてゲームに登場します。 流行景気などは、彼らの行動を通して表現することになるでしょう。

これにともない、ゲームの舞台も広がりを持つことが出来ます。 人里はなれた小さな村ではなくて、たくさんの人々が往来する、活気ある街角という設定が、 可能になりました。

僕がこれまで制作してきたゲームにたとえるなら、 「ワーネバの中にアイランドのキャラクターが登場する」といったところでしょうか? いや、 「アイランドの世界に、ワーネバのNPCがちょこちょこ出てくる」といったほうが近いかな? んー、 どっちも違うかも……まだ動くものを作ってないんで、なんともいえませんね。
制作者がそんなこと言ってちゃダメかもしれませんが、 この2タイプNPCシステムが、どんなものになるのか、内心ワクワクしてます。 なにか新しいコンセプトを思いついたときってのは、楽しいものです。 オルルドを作り始めたころの感覚を思い出しますね。

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次なる一手は

さっき述べたように、このシステムのイメージを明確につかみきってないんで、 どんなテストプログラムにしようかと、あれこれ考え中です。
職業の設定をもう一度考え直して、メインNPCとサブNPCを動かすようにすればいいんですが、 そこまでいくと、もうほぼ完成してしまいそうな感じがします。 いや、完成してもいいんですけど……テストプログラムとして、 もう少し小規模な形で実装できないかと悩んでる最中です。

んー、店をひとつに絞るかなぁ? プレイヤーの操作がまったく介入しない、 デモンストレーションにするかな? サブNPCのパラメータはどこまで実装しようか? サブNPCのclassから、 メインNPCのclassを派生させるかなぁ? 方向性は色々とありそうですが、 具体的な設計図はまだ出来てません。

とりあえずは、この辺のイメージをちゃんと固めてから、あらためて、 テストプログラム制作にとりかかろうと思ってます。どの道、3号の制作は一からやり直しですね。トホホ。

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