安永ノリカズのゲーム制作&Javaサンプル集

#03 ゲームにもっと気軽さを

Javaによる開発を決めた理由です。

2000年12月11日更新

インストール面倒くさいっす

今回のコラムは、ちょっと技術っぽい話題でいきます。 専門的な用語や、遊び手からすれば興味のないネタが出てくるかもしれません。 ただ、このコラムは僕の制作日記という意味合いもあるんで、ちょいとご辛抱のほどを。

僕が作っていくソフトは、前回のコラムでお話しした「魔法使いの街」ゲームをはじめ、 シェアウェアとして流通させることに決めています。 収益を上げ、ゲームの個人制作をビジネスとして成立させるのが狙いです。 ですから、制作した作品は、なるだけユーザーの多い市場で展開する。これは基本です。 じゃあ、オンラインソフト市場で、最もユーザーが多いプラットホームは? Windows? いえ、違います。 それはウェブブラウザー、そう、IEとかNetscapeなんです。 これを見逃す手はないと思います。だから、僕は、そのブラウザー上で動くJavaアプレット という形で、ソフトを提供していこうと思います。 これなら、WindowsでもMacでもLinuxでも遊んでもらえます。 もちろん、高速なグラフィック描画が要求されるようなゲームなら、 Windowsなどの機種に特化する必要があるでしょう。 しかし、僕には、「人と人とのコミュニケーション」をシミュレートすることで、 架空世界を構築することができる環境なら、それで充分なんです。 あえて機種を限定してユーザーを絞り込む必要はないと考えます。

「多くの人に遊んでもらえる可能性」以外にも、ブラウザー+Javaを選んだ理由はあります。 それは、「多くの人に知ってもらえる可能性」です。 ときどき、ベクターなどで、オンラインで流通しているゲームを調べることがります。 面白そうなものをダウンロードして、解凍して、インストールして、 もし、面白くなかったら、アンインストールして……。 正直、かなり面倒です。だから、いくつか見ただけで、すぐあきらめてしまいます。 どうしても必要なツールとか、「絶対にコレを遊びたい!」ってレベルのゲームなら、 多少の手間も何ともないんですが、「コレ面白いのかな?」のレベルのソフトだと、 とたんに面倒くさくなるんですよね。 ベクターのダウンロードランキング上位に登場するゲームが、 軒並み、トップページで注目ソフトとして取り上げられたものだというのも、うなずけます。 どこの馬の骨とも分からないものを、片っ端からダウンロードして、 試しに遊んでみるユーザーなんか、滅多にいないんです。
しかし、Javaアプレットで作っておけば、ウェブのページとほぼ同じ感覚で、 僕の作ったゲームを見て、知ってもらうことができます。 もちろん、そこで気に入ってもらえば、ローカルファイルにダウンロードして、 ネットに接続しなくても、遊ぶことができます。

ウェブサイトをダラダラと眺める、それは、一番気軽にパソコンを操作している瞬間ともいえます。 その気軽さで、僕のゲームに触れ、その気軽さのままゲームの中に入っていってもらいたい。 多くの人に遊んでもらうには、それが最良の方法だと考えています。 この気軽さが、ブラウザー+Javaの魅力です。

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でも、Javaもそれなりに面倒くさいっす

ということで、「気軽さを」求めてJavaによる開発を決めたわけですが、 世の中そんなに甘くはないみたいです。
Javaって言語は、現在かなりもてはやされているようですが、そのほとんどは、 ネットワークサーバーや組み込み系での採用であって、 デスクトップでJavaを使って積極的に開発をしているとの話は、あまり聞きません。 JavaがSunを中心とする反Microsoft陣営の産物であるという事情もあるかもしれませんが、 (ちなみにMicrosoftは、C#という言語でJavaに対抗しようとしています) 一般プログラマーにも、もうちょっと普及していても良かった気はします。 やはり、Java特有の煩わしさが、庶民(?)に嫌われた理由かもしれません。 その一つが、アプレットに対する、セキュリティーの厳しさです。 例えば、以前のバージョンのJavaでは、アプレットからローカルファイルにアクセスすることは、出来ませんでした。 ユーザーが悪意のあるサイトを閲覧して被害を被らないための、配慮です。 Javaアプレットで本格的なソフトウェアの制作を試みるも、この制約のために投げ出した人も多いはずです。 Java2(ver1.2)が発表されてから、そのへんは多少柔軟になってきました。 ユーザーがアプレットに認証を与えることで、ファイルの読み書きが可能になったのです。

こんなふうに、バージョンに気をつけなければならないのも、Javaの煩わしさですね。 現時点で、Java2に対応しているブラウザーはNetscape6だけで、 IE5.5もNetscape4.7もver1.1ベースですから、別途プラグインが必要になります。 開発には、Java2を採用する予定です(そうしないと、セーブデータも出力できませんから)。 ですから、僕のソフトの全機能を楽しんでもらうには、Netscape6か、 IEまたはNetscape用のJava2プラグインが必要となります。 あ、もちろん、Java2ランタイムをインストールしてアプレットビューアーで見てもらうのでもいいです。 いずれにしろ、大半の皆さんには、SunなりNetscapeなりのホームページから必要なものをダウンロード (結構でかいです)して、 環境を整えてもらう必要があると思います。
うーん、意外と気軽じゃないですよね。 ただ、これは2000年末の時点での話で、半年後には、また違う状況になっているかもしれません。 実際に遊べる物ができたら、この辺の環境に関しては詳しく説明するつもりです。

Javaの持つ生産性の高さ、とくに移植の容易さなどは、プログラマーにとっては 理想的な環境です。 さらに、本格的なソフトウェア開発を行えるだけのポテンシャルを持った言語でもあります。 なのに、なぜかJavaアプレットでは、こじんまりしたミニゲーム程度のものがほとんどで、 シェアウェアゲームのJavaアプレットなんて、見たことありません。 前例のないことに挑戦するのは、勇気がいることですが、 もし、このゲーム開発が成功して、デスクトップでのJava採用の一例となることができれば、 それこそ、開発者冥利につきるというもんです。

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一応ビジネス展開も考えてるっす

Javaを選んだ理由は、他にもあります。それはビジネス的な将来性です。

今月にも発売されるという、Java搭載iモードは、 実に魅力的なデバイスであると同時に、実に魅力的な市場でもあります。 それこそ、ゲームボーイやワンダースワンなどの携帯ゲーム市場に、 新機種が発売されたみたいな(ちょっと言い過ぎ?)ものです。 少なくとも、ゲームを発表する場が増えたってことは、喜ばしいかぎりです。
パソコンの前にいるときだけじゃなくて、外に出かけたとき、ちょっとした空き時間に、 僕の作ったゲームで遊んでもらう。これは最高の「気軽さ」ですね。 もし、チャンスがあれば、このプラットホームでも、僕のゲームを走らせたいと思ってます。
もちろん、僕が開発に利用する、PC向けのJava2 Standard Edition(J2SE)と、 携帯など組み込み向けのJava2 Micro Edition(J2ME)は、別物なので、そのままでは動きませんが、 パソコン以外での展開を考えた場合、もっとも有力なプラットホームであることは間違ないです。 ただ、ドコモが搭載するJavaの仕様を一般に公開してくれないことには、話になりませんが……。 (注:後日、一般にも仕様が公開されました) 個人に公開されないのなら、Javaiモード用のコンテンツを求めている企業と提携なんてのもあるかもしれません。 ああ、そしたら、ここ最近の貧乏生活ともおサラバできるかも……。

ま、これは、ずっと先の話ですね。まずは、しっかりしたシステムを作ることが肝心。 と、自分に言い聞かせておきましょう。 良いものを作れば、自然とビジネスの話も舞い込んでくるに違いありません。 ただ、いざそうなったときに、さっと対応できる体勢にはしておきたい。 そういう意味でも、Javaでの開発は大きな意味を持つと考えています。

ここまで前置きばっかりで、サンプルソフトの一つくらいないのかとお思いの方もいるかもしれませんが、 次回もやっぱり、前置きです(^_^; ゲームの開発における制作スタイル、みたいなことをテーマにしたいと思ってます。

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