安永ノリカズのゲーム制作&Javaサンプル集

#02 コミュニケーションゲームって何よ?

今回のゲームのコンセプト、制作の方向性を提示しました。

2000年12月06日更新

あの青い空の波の音が聞こえるあたりに……

まずは、この企画の方向性・コンセプトを、ハッキリさせておきましょう。 ゲームを作る上で、これだけはどうしても譲れないってものを決めておくんです。 もしも、制作途中で迷いが生じたときに、方針を決めるより所となるので、とても大切なことです。
頭の中には、いくつか作ってみたい企画があります。リアルタイムで動作するテキストアドベンチャー、 超マニアックなサッカーシミュレーション(実はサッカーの大ファンなんです)、 驚異の的中率を誇る競馬予想ソフト(競馬も大好きなんです)、 いや、ネットワーク対応で……そうだ、これまでにない新しいジャンルの開拓を…… いろいろと夢は膨らみます。今が、ゲーム作りで一番楽しいときかもしれませんね。 しかし、わくわくする気持ち中にも、何か心の中に引っかかるものがあります。
「ワーネバでやり残したことがある」という思いです。

リバーヒルソフトにて、ワーネバを世に送り出したのは、意義深い仕事だったと、自分なりに満足はしています。 しかし、同時に、もっともっとたくさんの人に、 あのゲームの面白さを味わってもらいたかったとの後悔もあります。 無謀だと笑われそうですが、FFやドラクエを超えないまでも、それらと比較されるくらいのシリーズにはしたかったです。 でも、そこまで一般のゲームユーザーには浸透してくれなかった。 一体、原因は何にあったのでしょうか? 僕は、エンターテイメントとしての完成度の低さだったと考えています。 どこか荒削りで、ところどころ中途半端で、たまに素人っぽかったりして、 さらにそれを「ワーネバならではの味」と思い込んでたり……。
「もっともっと作り込む余地があったんじゃないか? 斬新なシステムを構築するのに満足して、 面白さを演出する仕掛けが足りなかったんじゃないか?」 という思いが、どうしても心の中から離れません。
完成度が高められなかった理由は、いくつか思いあたります。 プレステの限界で実装できなかった、制作期間の都合やむなく切り捨てた、 「組み込む」のがやっとで、「作り込む」までには至らなかった、 そして何より、自分の能力が足りなくて、表現することができなかった……。 ただ、一体、どこからが自分の力不足で、どれがハードの制約で、 どのくらいの時間が足りなかったのか、なんとなく、ハッキリしないまま、今に至った気がしてなりません。 いや、むしろ、自分の力のなさを、時間やハードのせいにしてたんじゃないか……そんな思いもよぎります。

ああ、なんだか自己嫌悪におちいりそうです。こうなったらもう、落とし前を付ける しかないですね。過去の自分に。 今度こそ、きっちり作り込まれた架空世界を構築してやる!! 納得のいくまで。 それをやって初めて、前に進めるんじゃないかって気がします。 そう考えると、達成できなかった夢も、今の自分にとっては大切な財産です。 だって、僕にしか踏み出せない一歩があるってことですから。

 ページトップへ戻る

略してコミゲー……ちょっとヘンかな?

ということで、コンセプト(ていうか目標?)その1は 「作り込まれた架空世界を構築する」です。 しかし、よく考えると、これって、どのゲーム作りにも共通するコンセプトかもしれません。 たとえば、格闘ゲームでいえば、より人間らしい動きを表現し、 絶妙のゲームバランスに仕上げるのが「架空世界の作り込み」ですし、 戦国シミュレーションで、史実に近づくよう武将のパラメータを調整し、 臨場感あふれる合戦シーンを作るのも「架空世界の作り込み」です。 つまりは、ゲームの数だけ架空世界を作り込むアプローチがあるんですよね。
じゃあ、僕は何に主眼をおいて世界を構築するのか。とくに、独りでゲームを作ろうとしている以上、 そのポイントをきっちり絞り込めるかどうかが、 最終的な作品の良し悪しを決めるといっても過言ではありません。

僕がゲームで表現したいもの。それは、「人と人との関係が作り出す物語」です。 例えば、人々が集まって生活をし、その生活の積み重ねが、人生という物語を紡ぎだす。 または、人と人との間に起こる出来事の連続が、歴史という物語を形づくる。 まさに、そういう物語が作られる瞬間にプレイヤーを立ち会わせてこそ、小説や映画の真似じゃない、 ゲーム独自の深い感動が生まれるものと信じています。 ゲームの中に舞台を設定し、そこに人々を配置する。もちろん彼らは人格と意志に基づき行動し、 他者とコミュニケーションをとろうとする。 人と人が出会えば、出来事が起こる。その出来事が、さらに人々の行動に影響を及ぼす。 もちろん、プレイヤーもその世界の中で彼らとともに行動し、 出演者としてその世界が作る物語に参加する。 これが、僕がこれから実現しようとしているゲームのイメージです。 ですから、その基礎となる「人と人のコミュニケーション」の構築には、まず優先的に力を注ぎたいです。
このテーマは、僕がゲームを作り続けていくかぎり、ずっと、追い求め続けることでしょう。 人と人のコミュニケーションにスポットを当てたゲームということで、 僕がこれから作ろうとするゲームのジャンルを「コミュニケーションゲーム」 と呼んでいこうと思います。(後に「生活シミュレーション」に変更)

 ページトップへ戻る

明るい都市計画

さあ、作らんとするものが決まれば、次は、その舞台設定です。 人と人のコミュニケーションが繰り広げられる場所、そして、その人々が出来事を起こす世界。 どういった世界観にその舞台を置くかによって、プレイヤーに与える印象が大きく左右されることになります。
そして僕は、その舞台として「魔法使いの住む街」を選びました。 えっ、どうして突然、魔法使いなのかって? 実は、この企画のコンセプトを決めたときに、パッと心に浮かんだのが、 架空の街で、魔法使い達が大騒ぎしながら暮している光景だったんです。 それも、絵本の挿し絵のようなビジュアルで。 もちろん、その魔法使いの暮らしぶりというテーマは、すごく気に入りました。 奇想天外な力を持ってるけど、普通の人間とはちょっとピントがずれている、 そんな魔法使い達が集まって、仕事したり、喧嘩したり、恋をしたりしながら、 ワイワイ暮らしている様子。 僕たちとは、全く違った社会なんだろうけど、でも、その住人たちの気持ちはよく分かる。 ぜひ、そんな街を作ってみたいって思ったんです。

実のところをいうと、制作の動機やコンセプトなどは、きちんと理論的に導き出してきたのに、 この世界観だけは、何か思いつきでやってるみたいな感じで、 ちょっとシャクな気がしました。 だから、一応、ファンタジックではない世界観も、あれこれ検討はしてみたんです。 ただ、一番最初に抱いたイメージって、強烈に支配的なんですよね。 生まれたばかりのひな鳥が、最初に見たものを母親と思い込む刷り込み現象みたいに、 もう、どうにもこうにも、魔法使いが焼きついてしまったんです。 きっと、FF9の黒魔道士の村とハリー・ポッターに影響を受けたんでしょう。 まあ、ガチガチのリアルな世界にするより、多くの人に遊んでもらえそうですし、 面白さを演出する仕掛けもたくさん用意できそうです。 来年、ワーナーが「ハリー・ポッターと賢者の石」を映画化するそうなんで、そのときに起こった魔法使いブームとともに、 僕のソフトも大ブレイク……なーんてことはないでしょうけど。

さっそく、「魔法使いの街」の都市計画を考えないといけませんね。 住人はどんな魔法が使えて、どんな職業、どんな建物、どんな規則があるのか。 街の名前なんかも、決めたいですね。きっと、このゲームのタイトルにも関係してくるでしょう。 今後のコラムで、サンプルゲームでも作りながら、検証していきたいと思ってます。 魔法使いに関する資料も集めないといけないかな?
とにもかくにも、作りたいものは、(少なくとも僕の頭ん中では)明確になってきました。 ここで述べたこと以外に、すでに決めている設定なんかもありますが、それは実際にソフトが動きだしてからの お楽しみに取っておきましょう。
では、そのソフトを、どんなかたちで皆さんの手元にお届けするかってのを、次回お話ししたいと思います。

 ページトップへ戻る