制作を始めるまでの経緯、オンラインソフト制作を選んだ理由について書いてます。
2000年11月28日更新
僕は現在、それまで勤めていた会社を退職し、フリーでゲームの制作を行っています。
それも、九州の片田舎に事務所を構え、たった一人でポチポチと。
実は、この制作環境、非常に気に入ってます。
田んぼや山を眺めながら、プログラミングするのもなかなかオツなもんです。
フリーになる前は、株式会社リバーヒルソフトに勤めていて、プレイステーションなどで発売された、
「ワールド・ネバーランド」シリーズを企画してきました。
そのまま会社に残って、組織の中でゲーム制作を続けるという選択肢もあったんですが、
独立という道を選ぶことに、それほど迷いはありませんでした。
というのも「コンシューマー(家庭用ゲーム機)市場」よりもシェアウェア市場」、
「大規模なソフト開発」よりも「個人ベースのソフト開発」
に大きな魅力を感じ始めていたからです。
あれはシリーズ2作目の「ワールド・ネバーランド2~プルト共和国物語~」を発売したすぐ後のことです。
かねてより、リバーヒルでは、「ワーネバ公式サイト」を設置して、
その掲示板で、ユーザーの反応をいちはやく入手する体制を整えていました。
「ワーネバ2」に関しては、いろいろな意見・要望が寄せられたんですが、
その中に「前作に比べて子供が出来にくいぞ!!」という不満の声がありました。
ワーネバをやったことない人には、ちょっと分かりにくいかもしれませんが、
このゲームにおける妊娠判定について、簡単に説明したいと思います。
「ワーネバ1」と「ワーネバ2」では、妊娠の判定アルゴリズムを変更しました。
「1」では、プレイヤーが何度でも同じ会話を選択すれば、そのたびに妊娠したかどうかの
判定が行われるのに対し、「2」では新設した内部パラメータにより、
妊娠可能な期間でないと判定が行われない設定になっています。
PC(プレイヤーが操作するキャラ)の子作り会話連発を抑制して、
NPC(コンピュータが動かすキャラ)との立場を同等にしようとしたわけです。
余談ですが、この妊娠可能期間は、夫婦の幸福度が高いほど頻繁に訪れ、 幸福な家庭ほどたくさん子供を授かるといった設定だったんですが、 ゲーム中に上手く反映はされなかったようです……。むぅ~。
まあ、それでも、妊娠可能な期間を限定したぶん、1回の判定での妊娠確率はかなり高くしてあります。
本当に出来にくいのかなあ?と、念のため、仕様書を見てみました。
すると、完成間近のバランス調整で、値を修正した形跡があります。
NPCの人口が増え過ぎるようなので、子供2人目以降の妊娠成功率を低めに設定していたんです。
「下げ過ぎたか? システム移住者が多くなるかも知れないなぁ」
もちろん、ゲームを遊ぶという主題においては、何ら支障のない現象ではあるんですが、
ゲームの味わいに微妙な変化を投げかける、そういう修正であったことは確かです。
この妊娠確率の問題は「ワーネバ2」に寄せられてた要望の一例で、
他にも、バランス調整の範囲で対処できそうな問題点が、いくつかありました。
このゲームのバランス調整は非常に難しく、一つの数値を変更しても、
その変化を実際に感じるのは数日間プレイしてやっと、といった具合なんで、
ゲーム発売後に「ああすりゃよかったかな」という箇所
が出てきてしまったわけです(最終的には、ドリームキャスト版のワーネバ2で修正しました)。
でも、発売してしまった商品はどうしようもありません。
商品の回収など、現実的には不可能。これがコンシューマー市場の悲しいところです。
それまで、少しでも良いゲームにしようと、会社に泊まり込んでまで作ってきたのに、
発売してしまうと、もう手を出せない。
なにか、すごくもったいない気がしました。
「ワーネバ」をさらに良くするチャンスなのに、
指をくわえて見てるだけとは……。ここで、ふと思いました。
「オンラインで流通しているソフトなら話は簡単なのに」
そうです、バージョンアップすればいいだけのことです。
そして、さらに考えました。
「そもそもソフトウェアってものは、人に使われ、磨かれて
だんだん良くなって行くもんじゃないか」
OSだって、ワープロだって、バージョンアップで完成度上げてるし(機能を盛り込み過ぎて、下げるときもあるけど)、
アーケードのゲームだって、ROM交換で微調整してる。
そんなことを考えているうちに、いつしかオンラインソフトの可能性を試したい
と思うようになりました。
僕はずっと、コンシューマーこそ最もレベルの高い市場であり、 しかもプレステのように、その時代でトップのシェアを持つプラットホームでゲームを出してこそ、 価値があると思ってきました。もちろん、その価値を全面的に否定する気はありません。 ただ、オンラインソフトの開発に、今までにない魅力があると感じたわけです。 企業内で、スタッフと議論を交わしつつ、チームとして作品を作るのもいいけど、 個人でユーザーの反応を見つつ、コツコツとシステムを構築するのも面白いかな。 ゲーム制作者としてのキャリアの中で、こんな経験があってもいいんじゃないか。 そんな思いで、今日に至ってます。
さて、その思いからどんなシステムのゲームが生まれるのか? いよいよ 制作がスタートします。 その企画内容については、以降のコラムにて。